グラバー


【幕末タレント名鑑「グラバー」】

名前:トーマス・ブレーク・グラバー
所属:イギリス(スコットランド)
出身地:イギリス(スコットランド)

生年月日:1838年6月6日
没年月日:1911年12月16日
思想:倒幕

 





第36回は、倒幕の功労者!死の商人?志の商人?、グラバーさんです!

倒幕と明治維新は、薩摩藩や長州藩などの新政府軍が、最新の銃砲兵器を戦闘に多数使用したことで成し遂げられた一面があります。
では、その最新兵器は誰から手に入れていたのか。
その人物こそ、“死の商人”とも言われるトーマス・ブレーク・グラバーさんでした。

グラバーさんはイギリスのスコットランドの生まれで、父は沿岸警備隊一等航海士のかたわら造船業を営むという、「海・商・軍」と繋がりの強い家で育ちました。
これらが後のグラバーさんの分厚い生地となったに違いありません。

ギムナジウム(英国の8〜9年制の高校)を卒業後、1858年にグラバーさん(20歳)は父と弟と共に上海へ渡ります。
当時、世界の中でも有数の商業都市だった上海で商業を学んだグラバーさんは、翌年に開港して間もない長崎に来日しました。
そして、来日してから2年後の1861年、上海の時に入社していたジャーディン・マセソン商会の長崎代理店として「グラバー商会」を設立するのでした。

当初の経営内容は、日本の生糸や茶を輸出して石油や木綿、毛織物を輸入するということでした。
貿易や経営の才能があったようで、乗馬場や製茶場などを営み、着々と力をつけていったそうです。
この時はまだ、いわゆる“武器商人”ではなかったんですね。

転機が訪れたのは、1863年(文久3年)に起きた「八月十八日の政変」!
政治的混乱を投機と見たのか、薩摩藩や土佐藩、長州藩など、後に倒幕や明治維新の中心となる諸藩と接触を深めていきます。
日本人の海外渡航が禁止されている中、1864年には長州ファイブ(伊藤博文や井上馨など)の渡英の資金援助を行い、1865年には薩摩藩の五代友厚(ごだいともあつ)や森有礼(もりありのり)、寺島宗則などの海外留学の支援を行いました。
そして、坂本龍馬が創設した亀山社中と取引を行い、“武器商人”として多くの武器や軍艦を販売し、大きな後ろ盾となっています。

桁外れの資金力と人脈があったグラバーさんは、倒幕と明治維新に結びつく、2つの大きな同盟の功労者にもなっています。
1つ目は「生麦事件」に端を発する「薩英戦争」で敵対関係だった薩摩とイギリスの同盟です。
グラバーはイギリスの公使パークスを説得し、貿易と投資の相手であった薩摩藩との同盟にこぎつけました。
2つ目は「八月十八日の政変」などで犬猿の仲となっていた薩摩と長州による「薩長同盟」です。
後ろ盾となっていた亀山社中を通して、物資不足だった長州藩に多くの物資を提供しました。

後年にグラバーさんは「江戸幕府に対抗した反逆者の中で、私が一番のつわものだった」と振り返ったと言われるように、武器を販売する“死の商人”として倒幕運動に身を置きました。
ちなみに、倒幕運動に奔走するグラバーさんが長崎で過ごした邸宅は何と現在も残っており、現存する日本最古の木造洋風建築物として国の重要文化財に指定されています。

明治時代に入ると、長崎小菅(こすげ)ドック(現在の三菱重工業長崎造船所)を建設、高島炭鉱を開発、新政府の造幣局への造幣機械の輸入など、日本の近代化に多大な影響を与えました。
ところが、戦争の収束によって武器が売れなくなり、諸藩からの資金が返済されなかったため、1870年にグラバー商会は破産してしまいます。

その後は、高島炭鉱の実質的な経営者として日本に留まり、三菱の顧問・相談役を務め新規事業拡大に貢献しました。
その新規事業の1つにビール事業があり、1885年に「ジャパン・ブルワリー・カンパニー」を設立し、グラバーさんは重役に就きます。
この会社は後に「麒麟麦酒株式会社」に名前を変え、現在の「キリンホールディングス」へと繋がっていきました。
つまり、グラバーさんは日本のビール産業振興の功労者でもあったのです。
「とりあえず生!(ありがとうグラバー!)」ですね。

ちなみに、キリンビールの麒麟のデザインもグラバーさんの提案によるものだそうです。
長崎のグラバー邸にあった狛犬がモデルで、麒麟のヒゲはグラバーさん自身のヒゲを元にしたとかしてないとか。
その他にも、麒麟が龍と馬の組み合わせであることから、繋がりの深かった坂本龍馬をモデルにしたのではないかという話もあるそうです。

グラバーさんはその後も日本に滞在し、日本人のツルと結婚し、長女・ハナと長男・倉場富三郎(くらばとみさぶろう)をもうけました。
晩年は東京で過ごし、1911年にお亡くなりになりました。
激動の幕末を己の商才で潜り抜け、日本の近代化に大きく貢献した“志の商人”のお話でございました。



wrigting by 歴史芸人 / 長谷川ヨシテル




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